クリニックブログ
2017年12月31日
臨床歯周病学会
こんにちは!歯科衛生士の小林です。
今年ももう年の瀬ですね。今年は外部の学会に参加しました。
6月に大阪で開催された『日本臨床歯周病学会 第35回 年次大会』に歯科衛生士の宍倉と中田と共に参加してきました。
臨床歯周病学会とは、歯周治療の研鑚を通じて歯科臨床の向上に努め、もって国民の健康、福祉の増進に寄与することを目的としている学会です。臨床で活かせる歯周病についての知識を学んできました。
様々な題材の講演がありましたが、中でも私が一番面白いと感じたのは「病原性の高いプラークと低いプラーク」というテーマです。そこで学んだことを少し紹介したいと思います。
まず、歯周病の原因は何だと思いますか?加齢だと思っている方が多いと思いますが、実は歯周病菌という細菌が原因なんです!その歯周病菌にもいろいろな種類の菌があります。更に菌によって病原性が異なります。歯周病菌の病原性はピラミッドで表現されます。
ピラミッドの頂点の『レッドコンプレックス』がプラーク(歯垢)に定着しているかどうかが大きなポイントです。ちなみにコンプレックスとは、何かが合わさったという意味です。
P.gingvalis、T.denticola、T.forsythensisの3菌種の感染によりプラークの歯周病原性は大いに高まります。
一番下の層にあるブルーコンプレックス、パープルコンプレックス、グリーンコンプレックス、イエローコンプレックスがお口の中に定着しないとその上のオレンジコンプレックスは定着しません。また、オレンジコンプレックスがお口の中に定着しないとレッドコンプレックスは定着しません。病原性の低い細菌が増えると病原性の高い菌が住みつき、一度口腔内に住みついた悪玉菌は消えません。逆に不健康なプラークから健康なプラークへ変化することはありません。つまり、オレンジコンプレックスを定着させなければ、レッドコンプレックスがお口の中には定着しないということです。
口腔内の細菌叢は10代のうちに決まっていき、20代で定着してしまいます。子供の頃の管理が将来のお口の環境への変化を大きく左右するということですね。
口腔内の細菌は全部で約700種類あります。健康な細菌叢の口腔内には約30種類の細菌がいます。対して不健康な細菌叢の口腔内には約300種類もの細菌がいます。健康な細菌叢の口腔内より10倍も細菌の種類が多いのです。口腔内に定着した菌叢は歯周病の治療を行うことによって、それぞれの細菌の量は減りますが、細菌の種類の数は変わりません。
高病原性のバイオフィルム(歯垢)が形成されると、少量で歯周病が発症します。低病原性のバイオフィルムが形成されても多量でなければ発症しません。
最も病原性の高い歯周病菌は先ほど紹介したレッドコンプレックスに含まれるPg菌(P.gingvalis)です。Pg菌は18歳以上にならないと定着しません。日本人成人の65%が感染しているといわれています。
Pg菌は線毛(菌が動くためについている毛)の遺伝子型によってⅠ型、Ⅰb型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型に分類されます。
Pg菌の遺伝子型 |
線毛の型 |
オッズ比 |
Ⅰ型 |
直毛型 |
0.16倍 |
Ⅰb型 |
束毛型 |
9.21倍 |
Ⅱ型 |
パンチパーマ型 |
44.44倍 |
Ⅲ型 |
剛毛型 |
1.96倍 |
Ⅳ型 |
スキンヘッド型 |
13.87倍 |
Ⅴ型 |
産毛型 |
1.40倍 |
Ⅱ型だけオッズ比が桁違いに高く、最も病原性が高いです。
歯周病リスクを上げるといわれている喫煙のオッズ比は5倍、副流煙のオッズ比は3倍。
対してⅠ型は0.16倍と低く、Ⅰ型が口腔内に住みつくと歯周病になりにくいです。Ⅰ型の入った水でうがいを続けると、Ⅰ型が口腔内に定着して歯周病が発症しないというデータもあるそうです。菌の入った水でうがいをするのは少し抵抗ありますけどね(笑)
専門的な話になってしまいましたが、皆様の役に立つ情報を伝えられていたら嬉しいです。歯周病の予防は幼いころから始まっています!むし歯も歯周病も菌による感染症ですので予防できます!病原性の高いレッドコンプレックスがお口の中に住みつかないようにするためには、日々の歯磨きと定期的なクリーニングが重要です。レッドコンプレックスがお口の中に定着してしまっていても管理が出来ていれば発症も予防できます。歯周病の検査をしたことない方やひょっとして歯周病かな?と感じることがある方は是非あさひクリニック歯科へお越しください!
来年も精進していきますのでよろしくお願い致します。
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